あけましておめでとうございます。
「人生にとって健康は目的ではない。しかし、最初の条件なのである。」
武者小路実篤
辰年
生活習慣病とは | 高血圧症とは | 糖尿病とは | 呼吸器感染症とは |
心房細動とは | “眠れぬ”とは | 痛風発作とは | 腹痛とは |
冠動脈疾患とは | 認知機能障害とは | ”だるい”とは | 「がん」とは |
発熱とは | ※ | くも膜下出血とは | 気胸とは |
バセドウ病とは | めまいとは | イレウスとは | 喘息とは |
貧血とは | 心筋炎とは | 熱中症とは | 尿路感染症とは |
急性膵炎とは | 肝炎ウイルス感染症とは | リンパ節腫脹とは | 動悸とは |
橋本病とは | 白血病とは | 脳腫瘍とは | 失神とは |
髄膜炎とは | 浮腫とは | ※ | 息切れとは |
※ | 喀痰とは | 咳嗽とは | ※ |
インフルエンザとは | 脂質異常症とは | 頭痛とは | 発汗とは |
PETとは | 新興感染症とは | ※ | PTSDとは |
2023年 元旦 | 2024年 元旦 |
あけましておめでとうございます。
If you run after two hares, you will catch neither.
COVID-19 よ、脱兎の如くあれ。
無病息災を願っています。
Post-traumatic stress disorder
「心的外傷後ストレス障害」という。
自分の気持ちのなかで不慮の事故、大災害の被害、性的犠牲、戦争などを体験すると、整理がつかない状態におちいる。
すると自分の意志に反して頭のなかに浮かび上がり、走馬燈のように反復するのである。
この診断のポイントには、死ぬか生きるかに直面した恐怖体験の感情が必要となる。
ただ単に悪口を言われ嫌な感情が思い出されるというのは、この精神疾患ではない。
感染症は人類の流行性疾患である。
そして、日常診療でよく遭遇する疾患でもある。
いわゆる「かぜ」は最たるものであるが、連日報道されている新型コロナウィルス感染症<COVID-19>はパンデミックとなり、世界の街を静寂に陥れている。
コロナウィルスは「かぜ」の病原体だが、2003年にSARS、2012年にMERSを発生させ、東南アジアやアラビア半島に被害もたらしている。
2019年末から2020年始に、中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎が多発し、瞬く間にCOVID-19はパンデミックとなり、未だに世界中の人々を震撼させている。
20世紀最悪のパンデミックは、1918年に発生した「スペイン風邪」である。
これがA型インフルエンザウィルスの世界的な大流行である。
100年前の感染防止対策、社会の動揺、医療崩壊、風評被害の危惧は、影絵のように現状況を映し出している。
PANDEMIC;感染症の世界的大流行
SARS;Severe Acute Respiratory Syndrome
重症急性呼吸器症候群
MERS;Middle East Respiratory Syndrome
中東呼吸器症候群
COVID-19;Corona Virus Disease 2019
新型コロナウィルス感染症
いまや国民病といわれる「がん」の罹患と死亡は増加し、その検査と治療は進歩している。
Positron Emission (computed) Tomographyの略で、陽電子放出断層撮影という。
放射能を含む薬剤を用いる核医学検査の一種で、放射性薬剤を体内に投与、その分析を特殊なカメラで撮影し画像化する。
体内に投与する薬剤はきわめて微量のため、副作用はほとんど皆無である。
長所は、全身の検査ができる、病変をコントラスト良く描出できる、腫瘍の種類によらず検出できる、などである。
つまり、さまざまな悪性腫瘍において、全身の病巣を一回の検査で調べることができる、と言われている。
日進月歩の医療にあって、とりわけ、プライマリーケアを担う医師は、がんという疾患の特質を把握しなければならない。
格言:
飛行機は飛び立つ時より着地が難しい。人生も同じだよ。
by本田宗一郎
「寝ていると汗をたくさんかき、体がびっしょりになります。
先生、何でしょう?」
困惑したように、体格がよい77歳の男性は訴える。
この発汗過多の原因は、既往歴、診察、血液検査では判明しなかった。
ある時「先生、排尿時に空気の音がする。」
腹部超音波検査をすると“膀胱に光る物が流入”、今まで見たことがない光景である。
これは、直腸がんが膀胱壁に浸潤し「膀胱直腸瘻」を形成していたのである。
発汗過多の病態は複雑多岐である。
原因として、感染症、結核、悪性リンパ腫、悪性腫瘍、内分泌疾患、薬物乱用、神経疾患、更年期障害などが考えられる。
発汗過多は日常生活に支障をきたすことがあり、精神的苦痛を伴うものである。
Headache
日頃よく聞く訴えである。
この原因は多種多様で、問診が非常に重要である。
総じて一次性頭痛が多く、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛が含まれる。
生命予後に重大な影響を及ぼすのが、二次性頭痛である。
この代表が突発性頭痛のクモ膜下出血である。
頭痛の特徴:
片頭痛は「ズキンズキンと脈打つような頭痛」
緊張型頭痛は「締め付けられるような頭痛」
群発頭痛は「えぐられるような」
クモ膜下出血は「今まで経験したことのない強い頭痛」
“頭が痛い”と言っても、患者さんの表現は様々である。
頭皮をよく診ると、帯状疱疹が原因ということはある。
高脂血症のことである。
血液中の中性脂肪(トリグリセライド)や、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が基準より高い状態をいう。
または、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準より低い状態をいう。
診療を始める際は、空腹時であることを確かめ、採血する。
脂質異常症の診断基準(空腹時採血):
1.高LDLコレステロール血症は、LDLコレステロールが140mg/dl以上をいう。
2.低HDLコレステロール血症は、HDLコレステロールが40mg/dl以下をいう。
3.高トリグリセライド血症は、トリグリセライドが150mg/dl以上をいう。
さまざまな遺伝的要素、体質、食習慣、運動不足、肥満などが、原因の背景にある。
脂質異常症は、動脈硬化による脳梗塞、心筋梗塞など心血管疾患の危険因子である。
動脈硬化を進めないように、食事や運動で、生活習慣の改善を行う。
動脈硬化による病気をおこすリスクが高いときは、薬物療法が行われる。
毎年、冬期にA型とB型が流行する。
A型インフルエンザウイルスは、人以外に、鳥、ブタ、ウマに存在する。
B型インフルエンザウイルスは、人にのみ存在する。
診断の第一歩は、周囲の流行状況、接触歴の確認、臨床症状である。
インフルエンザウイルスの伝播様式には、接触感染、飛沫感染がある。
インフルエンザは潜伏期が短く、24〜48時間前後である。
臨床症状は、突然の高熱からはじまり、咽頭痛、頭痛、関節痛、倦怠感など、全身症状が強い。
インフルエンザに対する抗ウイルス薬は、発症2日以内の投与での有効性が高い。
インフルエンザの予防の基本は、あくまでもワクチン療法である。
閑話休題:
病気は千もあるが、健康は一つしかない。
by ベルネ
(1)急性咳嗽 acute cough:
3週間未満の咳嗽。
大部分がかぜ症候群に伴うものであり、自然軽快する。
(2)遅延性咳嗽 prolonged cough:
3週間以上持続する咳嗽。
感染症と非感染症の割合が不詳であり、原因疾患の診断も容易ではない。
(3)慢性咳嗽 chronic cough:
8週間以上持続する咳嗽。
さらに、8週間以上持続する咳嗽が唯一の症状であり、胸部単純X線写真やスパイログラフィーなどの一般検査や身体所見では原因を特定できない咳嗽を狭義の慢性咳嗽といい、感染症によるものはほとんどない。
喀痰をきたす疾患は多様である。
かぜ症候群、急性気管支炎、肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺がん、気管支拡張症、肺結核などを念頭におく。
これを踏まえたうえで、経過、痰の性状、胸部レントゲン写真異常の有無などを参考に鑑別する。
随伴する症状には、湿性咳そう、発熱、呼吸困難、血痰・喀血などが認められる。
経過が急性か慢性か、喀痰性状、随伴症状の病歴を慎重にとる。
そして、視診、聴診で身体所見をみる。
すぐに行える検査は、胸部レントゲン写真検査、喀痰検査である。
このように鑑別を進めれば、診断は可能である。
閑話休題:
鼻風邪は、思想なんかよりずっと多くの苦痛を与える。
by ルナール
慢性の息切れ(呼吸困難)の多くは、喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、心疾患のうち、いずれかが病因と推定できるといわれている。
息切れの感覚は、生体アラームのひとつである。
「空気の足りない感じ」の原因は、高炭酸ガス血症、低酸素血症が考えられる。
「呼吸するのに努力がいる」の原因は、呼吸筋の収縮・疲労・機械的負荷が考えられる。
「息苦しさ」の原因は、気道収縮が考えられる。
このように、低酸素だけが息切れの原因ではなく、呼吸に関連するあらゆる仕組みが関連している。
呼吸器系、心血管系、貧血、活動低下による身体機能障害の鑑別が重要である。
病歴を慎重にとり、身体所見をみて、胸部単純X線検査、心電図、スパイロメトリー、パルスオキシメータなどの検査をして、鑑別診断をすすめていく。
初期治療と専門医への紹介のタイミングが重要である。
浮腫とは、間質液量増加によって起こる触知できる腫れである。
浮腫をきたす頻度の高い疾患は、全身性の浮腫では、うっ血性心不全、肝硬変、腎不全、薬剤誘発性浮腫である。
また局所性の浮腫では、深部静脈血栓症、慢性静脈不全、蜂窩織炎である。
浮腫は患者自身がむくみを訴え、下肢がだるい、物が握りにくい、靴が履けないなどである。
最も浮腫の生じやすい下腿では、両側の足背、内窩後方、および脛骨粗面表面を最低5秒以上しっかりと圧迫し、むくみの有無と圧痕の程度により浮腫を評価する。
圧痕の程度は、すみやかに回復するか、指を離したあとも圧痕が残るかによる。
浮腫が片側性の場合には、局所性の浮腫であることが多い。
疑われた疾患について、尿検査、血液検査、画像検査を適切に選択し鑑別診断する。
見落としてはならない肺水腫は末梢の浮腫と異なり、生命危機に直結する。
治療の第一は、原疾患の治療である。
浮腫の原因疾患により、専門医への紹介のタイミングが重要である。
髄膜炎の典型的症状は、頭痛と発熱である。
しかし、これは、髄膜炎にとって特異的ではない。
そのため髄膜炎を疑わなければ、見逃す可能性がある。
脳炎を併発すれば、人格変化や記憶障害などの大脳症状も出現する。
さらに頭蓋内圧が上昇すると、嘔吐や意識レベルの低下などが出現する。
髄膜炎の病態は、くも膜あるいは軟膜における炎症である。
原因は、外傷や手術後の感染、副鼻腔炎や中耳炎からの進展などである。
病原体は、細菌やウイルスなどである。
予後は、病原体の種類、発症からの時間、患者の免疫能、および治療内容に依存する。
まず行うべき救急処置、主な鑑別診断と緊急検査が必要である。
髄膜炎の診療においては、迅速かつ的確な初期対応が極めて重要である。
確定診断が困難であっても、予想される病原体に対する薬物療法を早期から開始すべきである。
したがって、速やかに高次医療機関に搬送すべきである。
失神とは 「突然の意識消失発作により、姿勢の保持が困難となる症候」である。
一過性で、すみやか、かつ完全に回復することを特徴とする。
病態としては、なんらかの原因によって生じた急速な血圧の低下による一過性の全脳虚血である。
(1)神経調節性失神:
失神の原因疾患として最も頻度が高く、重症度は低い。
これは、長時間の立位、痛み刺激、高温多湿、気持ち悪い場面などが誘因となり、自律神経系の調節不全で失神Syncopeをきたすものである。
(2)起立性低血圧:
比較的に頻度が高く、重症度は低い〜やや高い。
これは、人が仰臥位から立位になると、大量の血液が胸腔内から下肢や腹部内臓系へ移動し、心臓への還流血液量が大きく減少する。
これにより、心拍出量は減少し、起立時に高度の血圧低下をきたす。
(3)心原性失神:
頻度は低く、重症度は高い。
心血管由来の失神で、不整脈性失神と器質的心疾患に分けられる。
不整脈性は、さらに徐脈性と頻脈性に分けられる。
徐脈性は、洞不全症候群または房室ブロックに起因して発現する。
高度な徐脈で心収縮が行われないことが原因である。
頻脈性は、心室性不整脈(心室細動、心室頻拍)に起因して発現することが多い。
これらの不整脈は、単独で発現することはまれで、多くは器質的心疾患(心筋梗塞、心筋症など)に合併して発現する。
閑話休題:
人の生は 歩く影にすぎぬ
シェークスピア・マクベス
原発性脳腫瘍:
頭蓋内に発生した良性と悪性の新生物である。
悪性の脳腫瘍は神経膠腫(グリオーマ)、これは脳腫瘍の中で発生頻度が最も高かったが、最近は良性の髄膜腫が組織別頻度を若干上回る。
代表的な症状は、腫瘍そのものと、腫瘍周囲に発生する脳浮腫による頭痛、嘔気、そして、うっ血乳頭という頭蓋内圧亢進症状である。
脳腫瘍が疑われたとき、まず頭部の画像検査(CT、MRI、脳血管撮影)を行う。
画像検査では、腫瘍の発生部位や大きさ、広がりだけでなく、脳腫瘍の種類や良性か悪性かについても、おおよその診断はつけられる。
治療の原則は、まず手術療法にて、できるだけ腫瘍の全摘出術を目指す。
補助療法として、術後に放射線療法と化学療法が施行される。
転移性脳腫瘍:
肺がん・乳がん・腎がん・直腸がん・胃がんの患者で転移性脳腫瘍が多い。
頭痛、片麻痺、手足のしびれなどが数日から数週間かけて進行する。
単発で3cm以上の腫瘍であっても神経症状が進行している症例は、開頭腫瘍摘出術が有効である。
手術適応のない症例で、腫瘍径が3cm以下、転移数が4個以下に対して用いられる定位放射線照射が、ガンマナイフやサイバーナイフである。
造血細胞の腫瘍性増殖である。
急性白血病は、3ヶ月以内に致死的となる。
慢性白血病は、リンパ節、脾臓、肝臓が腫大進行し、1年を超える。
急性骨髄性白血病は年間3~4人/10万人。
急性リンパ性白血病は、1人弱。
慢性骨髄性白血病は、1.5人前後。
慢性リンパ性白血病はかなり少ない。
症状は発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹、歯肉腫脹などである。
無症状のまま、血算の異常で見出されるケースもまれではない。
血球数の変化、末梢血への芽球・異型細胞の出現、全身症状、臓器腫脹、出血症状、発熱などから白血病の可能性を疑う。
白血病を疑った場合は、専門医に紹介する。
広範囲の点状出血・紫斑、高熱、白血球10万/μl以上、あるいは血小板3万/μl未満などがあれば、緊急を要する。
確定診断には骨髄穿刺検査あるいは骨髄検査を行う。
染色体分析・遺伝子検査は病型診断に最も重要な検査の一つである。
甲状腺に限局した自己免疫疾患である。
女性に多い。
この、橋本病(慢性甲状腺炎と同義)は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が常に増加している。
それゆえ、甲状腺機能(freeT4,freeT3)が正常な初期には、無症状である。
そして、甲状腺機能が低下するにつれて、全身倦怠感、無気力、動作緩慢、記憶力低下、便秘、顔面や下肢のむくみ、などの不定愁訴が生じてくる。
よって、診断の要点は、びまん性の甲状腺腫大、頸部に何らかの不定愁訴のある中年女性、甲状腺刺激ホルモンが上昇している甲状腺機能低下症、となる。
なお、甲状腺エコーでは、びまん性の甲状腺腫を認める。
そこで、甲状腺機能低下症の症状がある場合は、甲状腺ホルモンT4の補充療法を行う。
また、大量の無機ヨードを摂取すると、甲状腺は甲状腺ホルモンの合成と分泌を一時的に中止してしまう性質がある。
したがって、ヨード(昆布に特に多く含まれている)摂取量を制限する。
橋本病は甲状腺機能低下症となっても、甲状腺薬を継続服用すれば問題のない予後のよい疾患である。
閑話休題:
健康な人には病気になるという心配があるが、病人には回復するという楽しみがある。
by
寺田寅彦
プロローグ:
ふだん自覚しない心臓の不快な拍動が、動悸Palpitationである。
患者さんによって、どきどきする、脈がとぶ、脈が大きく打つなどの表現がある。
詳細な問診、症状時の12誘導心電図、全身の診察をもとに疾患を考える。
アプローチ:
主な原因で頻度が高いのは、心原性不整脈である。
この代表的な不整脈は、心房・心室性期外収縮、心房細動である。
病歴の具体例から、動悸の内容と発現形式により、考慮すべき疾患をあげる。
(a) 一瞬どきっとする、脈がとぶ、という動悸の内容から考えられるのは、期外収縮。
(b) 動悸の開始・終了がはっきりしているのは、発作性の不整脈である。
規則正しければ、発作性上室性頻拍、心房粗動、心室頻拍。
不規則であれば心房細動。
エピローグ:
動悸の原因として最も多いのは、不安による洞頻脈である。
これは必ずしも治療を要しない。
不整脈は基礎疾患に依存するため、全身検索および心機能評価が大切である。
生命予後を悪化させる不整脈が疑われれば、すみやかに専門医へ紹介する。
はじめに:
リンパ節は全身に約500個分布する。
リンパ節腫脹はリンパ節腫大ともいう。
正常でもリンパ節は存在するが、これが正常時よりも大きくなった状態をいう。
画像診断では、1cm以上の大きさでないと検出は難しい。
1cmくらいの大きさならばほとんど症状はなく、問題はないように思えるが、部位によっては症状が出ることがある。
この状態をきたす疾患は、感染症、腫瘍性、膠原病である。
症例:
42歳、主婦。
「どうしました?」
「咳が止まらないです。」
「いつ頃からですか?」
「1ヶ月前からかぜで、お医者さんにかかっていたのですが・・・・・・だるいです。」
体温37.4℃、扁桃腺異常なし、頸部リンパ節触知(+)、肺野聴診上異常音なし。
すぐに血液検査、胸部X線写真、超音波検査を行う。
胸部X線写真は、両側性に気管支リンパ節が腫大している。
超音波検査は、腹腔内にリンパ節腫大をみとめる。
診断は「悪性リンパ腫」の疑いである。
高次医療機関の専門医に紹介する。
悪性リンパ腫は、血液がんの一種である。
最も重要な検査方法は、リンパ節生検である。
日本でみられる肝炎ウイルスの病原体はA型、B型、C型、E型である。
診察室:
「どうしました。」
「だるくて、食欲がないです。」
40歳の男性は、10日前に感冒様症状(発熱、咽頭痛、頭痛)で感冒薬を処方されている。
問診をすすめると、発症前に出張先で貝類を食べている。
検査結果は広範に肝細胞障害を認め、入院となる。
急性肝炎はC型肝炎を除き、一過性に経過し自然治癒しやすいが、重症化、劇症化の移行に注意を要する。
感染経路:
(1) | A型肝炎ウイルスは、牡蠣などの海産物の摂取により感染する。 |
(2) | B型肝炎ウイルスは、血液・体液が経皮的・経静脈的に侵入することにより感染する。 |
輸血による感染は年間数例程度で、多くは性交渉により感染する。 | |
分娩時の母子垂直感染は減少している。 | |
(3) | C型肝炎ウイルスは、感染血液の輸血、薬物静注、刺青、針治療などで感染する。 |
(4) | E型肝炎ウイルスは、経口的に感染する。 |
ブタ、イノシシのレバーを加熱が不十分なまま食べることが最大の原因である。 |
閑話休題:
Don’t be afraid your life will end; be afraid that it
will never begin.
Grace
Hansen
膵臓Pancreasは、腹膜の後ろ側に位置する後腹膜臓器である。
解剖学的に、膵頭・膵体・膵尾の3部に区別される。
深部の臓器であるため、触診は困難である。
人体の暗黒大陸である。
はじめに:
急性膵炎の成因は、アルコール過飲と胆石である。
特徴的な臨床症状・徴候は、上腹部の急性腹痛発作と圧痛である。
その病態は多彩で、輸液などで軽快する軽症のものから、ショック・多臓器不全・敗血症を合併して死亡する重症もある。
アプローチ:
診断基準は、(1)上腹部に急性腹痛発作と圧痛を認める。(2)血中、尿中あるいは腹水中に膵酵素の上昇がある。(3)画像で膵臓に急性膵炎に伴う異常がある。
この3項目中2項目を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものが、急性膵炎である。
おわりに:
急性膵炎と診断した場合、軽症と判定されても翌日には重症化することもあり、入院治療を行うことが原則である。
重症急性膵炎に対しては、造影CTにより膵壊死の有無、炎症の膵外進展度を評価するとともに、大量輸液、予防的抗菌薬投与、蛋白分解酵素阻害薬の大量持続点滴静注、早期からの経腸栄養を行うことが推奨されている。
UTI:urinary tract infection
日常の臨床現場では、さほどまれではない疾患である。
原因は、尿路症状のある有意の細菌尿による。
尿路に基礎疾患のない単純性と、尿路閉塞などによる複雑性感染症とに分けられる。
急性膀胱炎:
尿意逼迫、頻尿、残尿感、肉眼的血尿が主な症状である。
臨床症状に加えて、膿尿、血尿が認められれば、急性膀胱炎と診断される。
単純性膀胱炎の治療には、抗生物質の3日間の短期治療が勧められる。
急性腎盂腎炎:
腰痛、悪心・嘔吐、悪感戦慄、高熱、叩打痛が特徴ある症状である。
急性腎盂腎炎の症状は、基礎疾患の有無によって大きく異なる。
検査所見では膿尿は必発で、白血球増多とともにCRPはかなり高値を示す。
基礎疾患や合併症の有無、全身状態によって、外来治療か入院治療かが選択される。
単純性急性腎盂腎炎の起因菌のほとんどは、大腸菌である。
治療は、十分な水分摂取が必要である。
抗生物質の選択と治療期間(7〜14日間)は、軽症・中等症・重症による。
heat illness
暑さや熱による生体障害である。
これは、体温上昇をともなわない日射病や熱痙攣と、体温上昇をともなう熱疲労や熱射病に分類される。
“熱疲労”は“熱射病”の前段階である。
“熱射病”が最も重症で多臓器障害を伴う。
体温上昇が著明であれば、循環血液量の減少やNa欠乏性脱水の程度が強く、うつ熱・体温調節障害による多臓器障害を合併し、予後も不良なことが多い。
「日射病」sun stroke は、体温38℃以下、意識が清明であれば、涼しい所で安静臥床させ、水と電解質を補給する。
乳酸リンゲル液か生理食塩水を輸液する。
予後は良好である。
「熱射病」heat stroke は、体温40℃以上、体温調節機能障害、高度の脱水、多臓器不全が病変である。
できるだけ速やかに体温を下げるとともに、各臓器障害に対する救急処置を行う。
予後は不良である。
救命救急センターなど、高次医療機関へ早期に転送する。
閑話休題:
患者「先生、私、初めての手術なもんですから、とても心細くて心配なんです。」
医師「お気持ちはよく分かります。実は、私も、初めての手術なんです。」
原因はウイルス性が多い。
感冒症状で発症することが多く、単なる発熱であっても、つねに本症を念頭におくことが大切である。
心筋炎に特異的な症状はなく、約半数は感冒症状で発症する。
「どうしました?」
18歳の女子高校生は、「昨日から38℃の発熱です。」
診察では特記所見なく、抗感冒剤を処方し、3〜4日後の再受診を指示する。
受診3日後に、「胸が痛みます。」
心症状の出現である。
心聴診の身体所見では、心膜摩擦音を聴取しない。
緊急で心電図検査すると、ST-T変化(上昇、低下、陰性T波)、R波減高、異常Q波などの異常所見を認める。
急性心筋炎を強く疑い、高次医療機関のハートセンターに救急転送する。
死亡率は10%程度であるが、急性期をのりきれば予後は良好である。
ただし補助循環を必要とする劇症型心筋炎では、救命率は50%程度である。
この患者さんは、看護大学をめざしている。
主 訴: | 易疲労感 |
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現病歴: | 3ヶ月前から、なんとなく、つかれやすい。 還暦になり、心身の変調を感じている が、今日は、階段をのぼると下半身にジンジンだるさがつたわってくる。 |
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既往歴: | 虫垂炎手術 |
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家族歴: | 父;慢性心房細動 母;本態性高血圧症 |
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現 症: | 血圧130/80mmHg 脈拍76/min. 体温36.0℃ 眼瞼結膜 蒼白 心肺聴診上異常音なし 腹部触診で下腹部に手拳大の腫瘤触知 |
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検 査: | ヘモグロビンHb8g/dl・小球性低色素性の鉄欠乏性貧血 (ヘモグロビン規準値;男13~17g/dl、女11~15g/dl) 腹部超音波診断装置の画像は子宮筋腫 |
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まとめ: | 高次医療機関の婦人科に紹介。 貧血は疲れやすく、ほとんどが鉄欠乏性で、赤血球中の血色素であるヘモグロビンの濃度が減少する。 ヘモグロビンは体中に酸素を運搬するが、貧血になり全身へ酸素がはこばれなくなると、症状が出現する。 貧血の原因は、偏食・ダイエット・妊娠・授乳・胃切除・月経過多・潰瘍・痔などである。 中高年の男女は、胃がん・大腸がんに注意を要する。 まず、出血・失血の原因を明らかにすることが大切である。 |
この症状は、発作性の咳や喘鳴を伴う呼吸困難が、夜間や早朝に出現しやすいのが特徴である。
これを、Morning attack、という。
喘鳴は、頸部・喉頭付近からゼーゼーと聞こえる音、のことである。
発作中ならば、聴診器で肺野全体に乾性ラ音(喘鳴)を聴取できる。
ところが、受診時に発作が治まっていたりすると、喘鳴を聴取できない時もある。
この喘鳴は、気道の狭窄により誘発され、呼吸困難を伴っていることが多い。
気管支喘息と鑑別すべき代表的な疾患には、うっ血性心不全(心臓喘息)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、上気道閉塞、気管内異物、肺塞栓症、などがある。
まず行うべき検査は、呼吸状態の把握のために、パルスオキシメータSpO2から重症度を判断する。
肺機能検査は、診断、重症度、治療評価の把握に有用である。
喘息の治療は、発作の強度に応じた段階的治療が施行される。
発作初期には軽症でも、急激な症状の悪化により、致死的な状態に陥る場合も少なくない。
閑話休題:
健康についての本を読むときは、注意したほうがいい。
誤植ひとつで、死にかねないから。
by マーク・トゥエイン
はじめに:
腸閉塞(Ileus;イレウス)とは、腸管の通過障害である。
原因は多岐にわたるが、機械的イレウスと機能的イレウスに分けられる。
機能的イレウスのほとんどは麻痺性であり、その原因としては開腹手術後、腹膜炎が重要である。
機械的イレウスは腸管の物理的な閉塞・狭窄により生じ、単純性と複雑性(絞扼性)に分けられ、単純性イレウスは術後の癒着が多い。
症状:
腹痛、悪心、謳吐、腹部膨満、排ガス・排便の停止がイレウスの症状である。
診断:
身体所見は、腹部膨隆、圧痛がみられる。
腹部単純X線写真(立位)では、腸管拡張像と鏡面像(niveau;ニボー)によりイレウスが診断され、その分布は閉塞部位の診断に有用である。
治療:
絶飲食のうえで、腸管の通過障害により生じた脱水を、輸液により是正し、全身管理する。
胃管、イレウス管を留置し、吸引減圧を図る。
おわりに:
高次医療機関の消化器外科に、速やかに転送する。
緊急の手術を要する外科的イレウス<複雑性(絞扼性)イレウスなど>では、直ちに手術ないし整復術を行う。
はじめに:
めまいとは、空間認知(自己と空間との位置関係の認知)が障害されたときに自覚される異常な運動感覚、と定義される。
回転性めまいVertigoは、回転感を主とし、器質的病変による。
非回転性めまいDizzinessは、動揺感・浮動感を主とし、軽症な器質的病変ないしは心因性による。
失神Syncopeは、眼前暗黒感ないしは一過性の意識消失を伴い、心・血管系の病変による。
臨床症状・所見:
問診が非常に有用である。
めまいの性状が、回転性か・動揺性か・失神性なのか。
発症様式が、安静時か・頭位変換時なのか。
耳鳴・聴力低下・耳閉感などの蝸牛症状が、あるかないか。
謳吐・嘔気の有無。
そして、バイタルサイン・身体所見・神経学的所見をとりアプローチする。
めまいの代表的な鑑別疾患と緊急検査が、有用となったりする。
おわりに:
日常診療でよくあるのが、この“めまい”症状。
いちばん多い診断は、良性発作性頭位変換呟暈症である。
つぎに、メニエール病である。
専門医の耳鼻咽喉科に紹介となる。
“めまい”は、循環器・出血性・脳血管疾患など多岐にわたる鑑別が必要である。
「どうしました?」
「2~3ヶ月前から体重が減り、ドキドキして、だるいです。」
「汗をかき、手指がふるえますか。」
「はい。」
40歳女性の甲状腺を触診すると、左右対称に腫大している。
既往歴に、特記はない。
家族歴では、母親が甲状腺機能亢進症。
血圧値130/80mmHg、心肺聴診上異常音なく、心電図は心拍数90/min.洞調律、Echo検査ではびまん性甲状腺腫。
血中甲状腺ホルモンの測定結果は、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンFT4・FT3が高値で、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンTSHは低値。
この内分泌疾患のバセドウ(ドイツの医師)Basedow病は、甲状腺機能亢進症の代表で、甲状腺自己免疫疾患である。
1. 甲状腺腫2.頻脈3.眼球突出をメルセブルグ(バセドウの故郷)の三徴Merseburger Triasという。
甲状腺ホルモン過剰による症状は多彩で、頻脈、発汗、体重減少があり、これらの症状は夏季に増悪する。
青年から壮年の女性に多い病気で、ある程度遺伝と関係があるといわれている。
一般的な初期治療として、まず、抗甲状腺薬から開始する。
喫煙はバセドウ病眼症を悪化させるので、禁煙させる。
抗甲状腺薬服用後の副作用、定期的血液検査につき指導する。
完治までには、最低3~4年かかることを説明する。
プロローグ:
“胸が痛い”主訴の疾患には、狭心症・心筋梗塞・大動脈瘤解離・胸膜炎・胸壁の帯状疱疹などがある。
“息が苦しい”主訴の疾患には、肺塞栓・うっ血性心不全・喘息・過換気などがある。
これらは、気胸との鑑別診断となる。
プライマリー:
「どうしました?」
23歳でやせて背の高い喫煙男性は、「胸が痛く、息が苦しいです。」
聴診すると、呼吸音に左右差があり、左側の呼吸音が減弱している。
X-rayでは、左側肺野上葉が虚脱している。
高次医療機関の呼吸器外科に救急転送する。
診断は、原発性自然気胸である。
アプローチ:
気胸は胸腔内に空気が溜まる状態を指す。
自然気胸と外傷性気胸に分類される。
自然気胸は、原発性がほとんどで肺尖部のブレブの破裂により起こり、続発性は慢性閉塞性肺疾患COPDが原因である。
外傷性気胸は、肺や気管支の損傷により胸腔内へ空気が漏出したり、胸壁の損傷により胸腔内へ空気が流入して発生する。
エピローグ:
急死の原因の一つで対応が遅れれば心停止に至る「緊張性気胸」は、X線検査を待たずに脱気する。
18Gの注射針で鎖骨中線上第2肋間を穿刺すると空気が噴出する。
映画「ディア・ドクター」に登場する迫真の名場面でもある。
はじめに:
くも膜下出血は急性心筋梗塞とともに、急死の2大原因の1つである。
初回の出血で15%が、2回目の出血でさらに15%が死亡する。
脳神経外科の救急治療を必要とする重篤な疾患である。
原因疾患:
脳動脈瘤が圧倒的に多く、70~80%を占める。
破裂脳動脈瘤:
脳動脈瘤の破裂が、くも膜下出血の最大の原因である。
好発部位は、Willis動脈輪前半部の血管分岐部である。
内頸動脈に多く、次いで前大脳動脈、中大脳動脈に好発する。
症状は、突然の激しい今までに経験したことのないような頭痛で、
バットで殴られたような、眼から火が出るような、との表現になる。
随伴して発症する病変:
中枢性病変は、脳血管攣縮、水頭症である。
他臓器病変は、眼底出血、肺水腫、たこつぼ型心筋症である。
治療法:
再破裂予防のため状況が許す限り、早期の外科的治療が必要である。
開頭動脈瘤クリッピングか血管内手術(動脈瘤塞栓術)のいずれかを行う。
ジョーク:
ある町の外科医の所へ、大ケガをした男が治療を受けに来た。
住所を聞くと隣の町から来たという。
医者は不思議そうに聞いた。
「隣の町なら、有名な外科医がいるのに、どうしてわざわざここまで来たんです?」
ケガした患者はこう答えた。
「私がその外科医なんだ。」
体温は、体内での熱産生と熱喪失のバランスで一定に保たれるようになっている。
一般に、“正常体温値”というのは存在せず、35.5~37.5℃の間が“正常範囲”と考えられている。
発熱だけでは、鑑別診断は非常に広範囲に及ぶ。
よって、発熱に随伴する症状が診断のアプローチとなる。
悪寒があるのか、頭痛があるのか、咽頭痛があるのか、咳・喀痰があるのか、心臓の基礎疾患があるのか、腹痛があるのか、腰痛があるのか、発疹があるのか、これらのカテゴリーにより原因疾患を推測する。
不明熱(fever of unknown origin;FUO)というのがある。
この定義は、
・38.3℃以上の発熱が数回以上。
・少なくとも3週間以上、発熱が持続。
・3日間の入院検査または、少なくとも3回以上の外来受診でも診断が不明。
FUOの領域で、特に注意すべき感染症疾患の代表は、感染性心内膜炎・深部臓器膿瘍・髄膜炎・結核・マラリアである。
成人のFUOで膠原病領域では、側頭動脈炎・成人Still病は代表である。
はじめに:
ヒトは、60兆の細胞でなりたっている。
発がんは、生活習慣や遺伝子変異や老化が関与している。
生体防御機構の免疫〜語源は疫(やまい)を免れる〜が、発がんを抑制している。
三大悪性腫瘍:
#1肺癌
「どうしましたか?」
「1週間前から、咳と痰がでて、2日前から左の胸が痛みます。」
「体温は36.7℃、胸部聴診は異常音ないですが、喫煙は?」
「20歳代から1日20本です。」
64歳男性の既往歴はなく、家族歴も特記なく、生活習慣病もない。
胸部レントゲン写真は、左上葉に2cm大の充実性腫瘤陰影を認める。
高次医療機関の呼吸器内科に紹介、結果は肺癌による転移性脳腫瘍と肋骨転移。
転移があるため手術不適応、化学療法と放射線療法を施す。
#2胃癌
糖尿病でかかりつけの72歳男性。
「先生、このところ食後に胃のあたりがもたれます。」
「そうですか・・・。触診ではシコリないが、内視鏡センターで胃カメラをしましょう。」
上部消化管内視鏡の結果は、進行胃癌。
告知すると治療の意思はなく、在宅での"あるがまま"を希望。
#3大腸癌
高血圧症・糖尿病・脂質異常症でかかりつけの88歳男性。
「きのう血便があり、びっくりしました。癌ではないかと・・・。」
「では、内視鏡センターで診てもらいましょう。」
下部消化管内視鏡の結果は、S状結腸癌。
転移はなく消化器外科で手術、深達度は粘膜筋板・リンパ節転移はない。
おわりに:
日本人の死因の第1位は悪性新生物。
男性は2人に1人、女性は3人に1人、「がん」に罹患している。
毎年30万人以上が亡くなっている。
がん患者の心のケアをどのようにするか、在宅ケアをどうささえるかは、悩むところである。
ホスピスの起源は、疲れた旅人の宿泊に修道院が提供した施設。
緩和ケアのホスピスは、"いつかは死を迎えるが、最後まで人間らしく穏やかに過ごす"、この終末期の役割を担っている。
考える疾患:
全身倦怠感は、体がだるい、疲れやすいなど、じつに漠然としている。
これは、あらゆる疾患で出現する。
器質的疾患、精神疾患、生理的疲労、慢性疲労症候群である。
アプローチ:
問診ではじまり、身体的な異常所見がないか診察、異常あれば疑わしき疾患にしぼって、尿・血液・生化学・心電図・胸部X-ray検査を行い、問診でおえる。
これが鑑別診断のてがかりとなり、除外診断のたすけとなる。
町医者が診る全身倦怠感の器質的疾患のなかで、甲状腺機能亢進症・低下症を見逃してはならない。
精神疾患はうつ病、生理的疲労は不眠が関与している。
慢性疲労症候群は、6ヶ月以上持続する原因不明の全身倦怠感。
休養しても回復しない、仕事や生活習慣のせいではないストレスにさらされ、免疫・神経・内分泌異常をきたし、全身倦怠感を自覚すると考えられている。
プライマリケア:
日々の暮らしで自覚しやすいのが、“だるい・つかれた”である。
全身倦怠感は不定愁訴のひとつでもある。
不定愁訴は、器質的に説明できない身体症状の訴えで、プライマリケアの町医者に受診する人は多い。
心気障害は、重い病気を恐れ、病気でない保障を求め、検査を求め、薬の副作用を恐れる。
身体化障害は、症状が苦しく、病人であると診断を求め、症状除去を求め、薬を求める。
昔から、“病は気から”と言われているゆえんでもある。
また逆も真なりで、“気は病から”とも言える。
はじめに:
脳Brainは、大脳・脳幹・小脳に分けられる。
大脳は前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、大脳辺縁系に分担され、ヒトの脳機能と構造を担っている。
なかでも、大脳辺縁系の一部である海馬(ありさまがタツノオトシゴ)は、記憶・学習能力に関わっている。
#1 アルツハイマー病:
主症状は、数分から数か月前の事柄を忘れる近時の記憶障害である。
これを中心に、見当識・思考・判断力が低下、緩徐に進行していく。
初老期(40歳以上65歳未満)から老年期(65歳以後)に発症する。
診断の参考は頭部CTやMRIで、初期は海馬の委縮、進行すると大脳が委縮し脳室も拡大する。
特効薬はないが、コリンエステラーゼ阻害薬は有用。
#2 血管性認知症:
脳血管障害(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血・慢性硬膜下血腫)による因果関係で発症。
#3 レビー小体型認知症:
「玄関に誰かいる」「床をアリがはっている」など、ヒトやイキモノの幻視が特徴で、記憶障害の程度は軽い。
よく傾眠し、眠りから覚めると混乱し、幻視・妄想状態になったりする。
#4 特発性正常圧水頭症:
初期に歩行障害、次に認知障害、最後に排尿障害を認める。
これが、特徴的な臨床所見である。
病因は不明で、脳脊髄液循環の異常が関与しているようだ。
確定診断後の治療の主体は手術で、脳室腹腔短絡術などがある。
シャント術による歩行障害の改善率は、良いようである。
おわりに:
超高齢化社会にあり、介護保険制度を必要とする患者は、増加の一途にある。
特別養護老人ホーム入居待ちは、待機児童ならぬ待機老人が、52万人もいる。
在宅で要介護3以上は、15万人以上である。
先の第2次世界大戦が終わり、2年後に出生した戦争を知らない団塊世代は、8年後には後期高齢者となる。
その頃の認知症患者数は・・・・・・。
深刻である。
はじめに:
生命の源である心臓Heartは、筋肉の鎧をまとい、その上に王冠の冠に似た動脈が心筋に酸素と栄養を送り、“いのち”のポンプ機能を全うしている。
冠状動脈は、心臓の右側と左側に乗っかっている。
右冠状動脈は、心臓の後壁と下壁を栄養している。
左冠状動脈は、前下降枝と回旋枝に分岐する。
前下降枝は心臓の前壁と心尖部を栄養、回旋枝は心臓の左側壁と左後壁を栄養している。
#1 狭心症:
67歳男性の生活習慣は喫煙・飲酒、疾患は高血圧症・脂質異常症。
「登り坂を歩くと胸がしめつけられます・・・」
「時間はどのくらい続きますか?」
「5分です。」
「どこに感じますか?」
「左の胸と肩です。」
労作性狭心症である。
安静時心電図に異常はなく、冠拡張の硝酸薬舌下錠を頓用処方。
その後、硝酸薬1錠舌下で症状消失するが、Holter心電図は、登り坂の胸部絞扼時に虚血性変化を示している。
この為、高次医療機関循環器内科に運動負荷試験と冠動脈造影検査を依頼すると、診断は左冠状動脈から分岐する前下降枝の狭窄。
#2 心筋梗塞:
典型の自覚症状は、胸痛が最も多く、30分以上持続し、前兆なく突然発生、死の恐怖感を伴う。
急性心筋梗塞は、冠動脈血流が途絶し、その閉塞部を中心とする末広がりの心筋が虚血性壊死に陥る。
Risk factorは、脂質異常症・肥満・喫煙・高血圧症・ストレスなどである。
臨床診断の有力手段は心電図で、特徴ある所見が展開し、梗塞部位と範囲が推定できる。
救命救急を担う高次医療機関ハートセンターで、救急処置・緊急検査・治療の術を施す。
おわりに:
心疾患は、日本人の死因第2位。
動脈硬化症は、血管が硬くなり、内腔が狭くなっている状態で、脂質・血栓により血管の内皮細胞障害をおこし動脈硬化がはじまる。
これは、サイレントキラーである生活習慣病のイントロダクションとなる。
上腹部:
48歳、男性の主訴は、悪心・上腹部痛。
発熱、黄疸は認めない。
触診すると、右季肋部に圧痛を認める。
腹部に超音波診断装置の探触子を走査すると、strong echoとacoustic shadowの存在、肝臓・膵臓に異常は認めない。
胆嚢結石症である。
胆石症Gall stoneは、胆汁中の成分が析出・凝集した結果の固形物で、コレステロール系とビリルビン系に分類される。
胆石症の80%は無症状で経過するが、食後や夜間、突然に疝痛で発症する。
胆石から併発する合併症の急性胆嚢炎は、急性腹症の病態に変化し、緊急を要する場合がある。
下腹部:
17歳、女性の主訴は、発熱・悪心・嘔吐・下腹部痛。
触診すると、回盲部に特有な圧痛点を認める。
腹膜刺激症状は呈していない。
が、時間的経過により周囲腹膜への炎症拡大や、穿孔により限局性腹膜炎を生じるので、手術適応である。
急性腹症の中で最も頻度の高い急性虫垂炎Appendicitisは、盲腸の先端に位置する虫垂の細菌感染による急性炎症で、リンパ組織の過形成や糞石や異物が原因となる。
虫垂炎の画像診断検査は、Computed tomographyがEchoより優れている。
側腹部:
36歳、男性の主訴は、悪心・嘔吐・側腹部痛。
問診で間歇的疼痛、触診で圧痛はなく、左腰部を叩打すると激痛、尿検査で潜血反応強陽性。
尿管結石による疝痛発作である。
尿路結石Urinary lithiasisは、蓚酸Ca結石が多く、男性が女性より多い。
まとめ:
腹腔内には、多くの臓器・器官が、整然と神秘に、位置している。
それゆえ、内科、外科、婦人科、泌尿器科領域にまたがり、鑑別診断が要となる。
上腹部痛、下腹部痛、側腹部痛の症状からの疾患で、とりわけ急性腹症は、専門医への紹介のタイミングが重要である。
午前いちばん:
40歳男性が左足をひきずりながら椅子につく。
「どうしました。」
「出勤しようとしたら、猛烈に親指のつけねが・・・」
「赤く腫れあがっていますね。触りますよ。」
「う〜痛っ!」
「尿酸値が高いと言われた事はありますか。」
「はい。」
「ご両親は高尿酸血症ですか。」
「分かりません。」
「ビールは飲みますか。」
「少しです。」
化膿はしていない。
患者さんの血液中に尿酸が多くなり関節に尿酸塩(尿酸の結晶)がたまり、唐突に激痛を伴う炎症発作となったのである。
この背景は、生活習慣病の<高尿酸血症>である。
正常尿酸値は7.0mg/dl以下。
血液中に尿酸が増える原因は、アルコール過剰・遺伝的体質・食事・肥満・降圧利尿薬が考えられる。
サイレント・キラーの高尿酸血症は痛風のみならず、高血圧症、糖尿病、脳血管障害、心疾患、尿路結石、腎障害(痛風腎)、肥満などとの関わりが知られている。
治療:
痛風発作にはコルヒチン、非ステロイド系消炎鎮痛剤を処方。
高尿酸血症は薬物療法が中心であり、尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬に大別され、病態により選択投与し、副作用は少ない。
生活習慣の改善も大切で、バランスのよい食事、水分をじゅうぶんとる、アルコールはひかえる、プリン体(お菓子のプリンとは無関係)をとりすぎない。
エピローグ:
♪春は三月野末のはての 草のあいだに花が咲く〜
高校校歌の冒頭である。
この季節になると同期の友人から、色とりどりの安房国のストックが届く。
ほのかな甘い香りがただよい、寒さをおしやる思いである。
プロローグ/
南の宙にオリオン座が輝き、北風が頬を撫で、流れ星が飛んで行く。
月の満ち欠けは暦を巡り、睡眠と覚醒は地球の自転によって、夜と昼の時期を同じくしている。
心と体の環境変化で、生体時計が揺れブレたりすると、眠れぬ夜となる。
アプローチ/
不眠 Insomnia の要因は、身体的・生理的・薬理学的・心理的・精神医学的がからむ。
身体的;痒い、痛い、発熱、咳、呼吸困難、頻尿、下痢・・・
生理的;湿度、音、光、旅、引っ越し・・・
薬理学的;くすり、酒・・・
心理的;緊張、ストレス・・・
精神医学的;不安神経症、うつ病・・・
本当に慢性の不眠かどうかは、睡眠の習慣を確認しなければならない。
眠れない、食欲がない、体重が減る、気分がおちこむ、疲れやすい症状の<うつ病>は、不眠が慢性に2週間以上続き多彩な身体症状をひきおこす。
それを不眠のせいだと考えるのは違う!
よって、睡眠薬で治療できるものではない。
プライマリケア/
まず、寝る時刻と眠った時間にこだわらない。
生活習慣を規則正しく、心と体の環境を良好にする。
大脳辺縁系の興奮を抑え、自然睡眠に導く睡眠薬を正しく使う。
欧米ではクスリを使わない認知行動療法CBT-Iの有用が確立されている。
エピローグ/
「人は今日のことでは苦悩しない。
昨日起きたことへの後悔、それに明日起こるかもしれないことへの恐れ、それでくよくよする。」
by ロバート・ジョーンズ・ブルデット
朝の診察室:
「先生、昨晩から心臓がガタゴトしてドキドキします。」
高血圧症、糖尿病でかかりつけの69歳の男性患者さんは不安そうに訴える。
「血圧は120/76mm/Hg。心臓聴診で不整脈が発生しています。心電図の検査をします。」
その所見は心拍数145/min.心房波は欠如/基線は細状波/心室波は不規則になっている。
診断は発作性心房細動。
ジギタリス製剤1錠とマイナートランキライザー1錠を処方、明日受診指示。
「どうですか?」
「良くなった様です。」
心電図は洞調律に復帰している。
その後再発なく経過、心臓超音波検査は左室後壁運動良好、心室中隔13mm、血栓を認めない。
日頃の診察で診られる不整脈のひとつが、心房細動です。
この不整脈である心房細動が引き金になり、心臓で血栓ができると脳の血管を詰まらせ、重い脳塞栓(脳梗塞のひとつ)になるのです。
これを、心源性脳塞栓症と言う。
そう、怖いのです!
なお、心房細動全体の80%以上は、65歳以上である。
治療は、抗凝固療法。
心房細動は再発しやすいのです。
再発を前提に脳塞栓を予防するには、血を固まりにくくする抗凝固療法を行います。
この代表的な薬はワルファリンで、服用中はビタミンKが多い納豆・海藻は食べられません。
また効きすぎると出血しやすくなるため、2ヶ月に1度は出血凝固検査を行い、適正範囲から薬用量を調整するのです。
その欠点を解消し登場した新薬は、食品制限や定期的血液検査の必要はないが、服用をやめると24時間で効果がなくなります。
また、心房細動を繰り返し、症状の強い例では、心臓でケイレンを起こしている部分を焼き切るカテーテルアブレーションという治療法がある。
これは再発することも多く、完全に止めるのは難しいのです。
迎春口上:
あけまして 、
おめでとうございます 。
21世紀の新たな午年、無病息災を願っています。
暮らしと体調は、春・夏・秋・冬の気候と気象の変化により、左右されるものです。
もういまは、紅葉が散り/枯れ葉が舞っている。
この頃になると、疲れた体が反応して発熱・鼻水・のどの痛み・咳・痰が出やすくなります。
いのちの基本活動を担っている呼吸器は、体内に酸素を取り入れ二酸化炭素を放出する機能であるが、そこにウイルス・マイコプラズマ・細菌・真菌が侵入すると呼吸器感染症を発症する。
町医者の診察室で圧倒的に多いのが、かぜ症候群。
そして、気管支炎・肺炎・非結核性(非定型)抗酸菌症・結核である。
「どうしました?」
「1週間前から鼻水、咳、痰がでて、食欲がありません。」
「体温37.6℃。のどの炎症はなく、リンパ節を触知せず、肺野聴診上は異常音なし。念のため胸のレントゲン写真を撮ります。」
シャウカステンに現像写真をかけると、右側下葉に異常影を認め、肺炎の像である。白血球数/末梢血液像・炎症所見を知るため採血し、注射抗生物質を点滴する。経口抗生物質/鎮咳剤/去痰剤を1週間処方、点滴4日間指示する。
検査結果は白血球/好中球増多で細菌感染を示唆し、1週間後のX-rayでは右側下葉の異常影はほぼ消失している。よって非結核性抗酸菌症、結核、癌を除外診断できる。
聞き慣れない非結核性抗酸菌は、土/埃/水の自然界に広く存在し、結核菌とは異なりヒトからヒトに感染することはない。
主訴が微熱・咳/痰・血痰・全身倦怠感なら、鑑別診断として非結核性抗酸菌症を疑い喀痰検査をする。
その結果から確定診断し治療するが、難治性である。
この病気は日頃の診察において稀な事であるが、庭いじりの中高年に発症している。
ところで、日本人の死因(平成23年度)の第1位は悪性新生物、第2位は心疾患、第3位は肺炎、第4位は脳血管疾患、第5位は不慮の事故。
肺炎による全死亡者数の95%が65歳以上である。
肺炎で一番多い病原菌は、肺炎球菌です。
肺炎球菌による肺炎を予防し重症化を防ぐのが肺炎球菌ワクチンです。
このワクチン接種は、65歳以上の方や慢性閉塞性肺疾患COPD(肺気腫・慢性気管支炎)の方に奨められています。
昔から“かぜは万病のもと”とも言われています。
これから寒さがつのっていきます。
ゆく年を思い、除夜の鐘を聞きながら、くる年を元気に迎えましょう!
Diabetes Mellitus
プロローグ/
diabetesはギリシャ語のサイフォン、mellitusはラテン語のハチミツである。
蜂蜜のように甘い尿が流れ出すことから、昔は蜜尿病、今は糖尿病と言う。
先の太平洋戦争の飢餓から飽食に移り、21世紀の平成の患者数は、昭和30年よりも、な!なんと!35倍の増加である。
日常診療のほとんどが2型糖尿病です。
これは生活習慣の悪さからきています。
糖尿病の背景は、環境因子の高脂肪食や運動不足の肥満が悪さをし、なおかつ内臓の脂肪蓄積によってインスリンが抵抗性を示し、そこに遺伝因子によるインスリンの分泌低下が作用して、インスリン作用不足に陥るのである。
そうなると、さあ大変、サイレントキラーが隠れ潜んでいた悪因子を引き連れ、暴れだすのである。 その典型的症状は、口渇・多飲・多尿・体重減少です。
よって、尿に糖が出るだけではなく、血液に含まれる糖分が多くなるのであり、これが続くと血管障害をおこしやすくなり、初期は無症状でも、進行すると網膜症による失明や、腎不全、心筋梗塞や脳卒中の合併症を引き起こすのです。
ところで、糖尿病の診断基準は、空腹時血糖値126mg/dl以上、HbA1c(ヘモグロビンA1c/国際基準値)6.5%以上である。
HbA1cは、過去1ヶ月間の血糖の調節状態を反映する指標となる。
HbA1c%は糖尿病治療の評価を示し、その基準は優6.2未満、良6.2~6.9未満、可6.9~8.4未満、不可8.4以上である。
なお、糖尿病治療の基本である食事療法は、腹8分目・食品の種類を多く・脂肪を控え・食物繊維を多く・3食を規則正しく摂る。
運動療法は、エネルギー摂取・消費バランスを改善し、インスリンの働きをよくする。
薬物療法は、病態に合わせた経口血糖降下剤の選択にあり、それはインスリン抵抗性改善系・インスリン分泌促進系・食後高血糖改善系に大別され、その種類から多数分類され処方されている。
インスリン製剤も多種多様で、おおいに貢献している。
エピローグ/
11月14日は世界糖尿病デーです。
この日は地球の名所がブルーにライトアップされます。
赤色光の東京タワーは青色光を放ち、六本木の夜景は変貌するのです。
“天高く馬肥ゆる秋”
しっかりと足元を見て、空を仰ぎみよう。
明日にむかって・・・
夜の診察室:
急患である。
「どうしました?」
「今朝から吐き気がして、体がフワフワします。」
「頭が痛く、物が見にくいですか?」
「それはないです。なにか変です。」
「体温36.5℃、脈拍80/分。左上腕で血圧を測りましょう。最大(収縮期)が180、最小(拡張期)が100mmHgです。心臓の聴診は、雑音や不整脈を認めません。」
「先生、血圧が上がったのですね。」
「そのとおり。ご両親のどちらかが高血圧症ですか。」
「母は脳出血で60歳の時に亡くなりました。」
「では、横になり舌を出して下さい。油性の苦い薬を注入します。」
そして、30分後の血圧は136/80mmHg。
血圧上昇の症状は改善され、明日受診を指示。
昼の診察室:
「気分はいかがですか?」
「昨日のことが嘘のようです。」
「それは良かった。血圧は148/90mmHg。これと言った原因がない本態性高血圧症です。遺伝・食塩摂取過剰・肥満・ストレスによる生活環境の因子が重なったようです。でも、症状が現れ、サイレントキラーから解放されたのです。降圧剤を処方しますので、2週間後に受診して下さい。それから塩分を減らし(6g/日)、食生活に注意し、BMI体格指数26なので、体重をゆっくり減らしていきましょう。」
「先生、よろしくお願いします。」
さて、高血圧症は多彩な様相を持っています。
仮面をかぶって、早朝、昼間、夜間に訪れ、白衣の医師を悩ましたりもします。
昨今の降圧剤の進歩は著しく開発されています。
しかるに、多様な仮面高血圧、早朝高血圧、昼間高血圧、夜間高血圧、白衣高血圧に対策がうたれ、工夫されているのです。
このサイレントキラーの高血圧症は、脳血管疾患、心疾患、腎疾患の主要な危険因子になるのです。
備えあれば憂いなし・・・
ひと頃は、「成人病」とよばれていた病気のことです。
そして、これはプライマリーケアを担う内科の日常診察のなかで、 いちばん多くみられる疾病です。
この診断名は、高血圧・糖尿病・高脂血症・高尿酸血症です。
これらの生活習慣病は、“サイレントキラー”(沈黙の殺人者)とも呼ばれています。
静かに忍びよる病の影、まるで映画のタイトルのようです。
そう、恐いのです!
それは、なんと自覚症状がでにくいため、気がつかないで生活しているのです。これを放置すると動脈硬化を発症し、脳の血管がつまったり・やぶれたりする脳血管障害、および、狭心症・心筋梗塞の虚血性心疾患や不整脈の循環器疾患などに、リンクしていくのです。
そして、生命にかかわる場合が多くみられることから、サイレントキラーと呼ばれるのです。
そのなにげない日々の暮らしのなかで、危険な因子がかかわっているのです。その要因は、食習慣・運動不足・ストレス・喫煙・飲酒・肥満です。
まずは、これらを改善する必要があります。
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